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米国のK12(小中高)での電子教科書の利用(1)

本日,昨日と,シアトルや,その周辺のSchool districtを再び回って,支援技術担当者に会ったり,小学校を見学してきました(日本の某研究所からの先生二人から見学依頼があったので,先生方もお連れして訪問しました)。Snohomishの方は以前も伺っていて,学校にも訪問して担当者のこともよく知っていますし,とても進んだ取り組みを初めておられるので印象深く忘れそうにないのですが,Seattle Public Schoolsの方が初めて伺って,今回は担当者に会うのみで学校に訪問するセッティングも間に合わなかったので,忘れないうちにメモしておきます(随時追加予定)。

結論から言えば,今回見学したSeattleとSnohomishでは,「BookshareのテキストDAISYをダウンロードして,音声読み上げ機能のあるATソフトウェアで読む」というやり方が基本でした。

基本情報

最初に訪問したのはSeattle Public Schoolsです。UWのDO-ITのスタッフの一人が仲良くしているので,紹介してもらって訪問してきました。では,OTやST,Special Educationの教師の資格を持つ担当者が「Assistive Technology Specialist」としてAT Teamを組織し,その学区内の学校(Seattle Public Schoolsは小学校70校,中学,高校が各10校ずつ)のサポートをしています。School Districtに所属しているわけで,AT Teamは特定の学校の教師ではありません。

AT Specialistはその豊富な経験のある人が名乗るもので,そのものに資格はありません。ただ,RESNAの認定などを持っている場合もあります。こうした人たちが,どのようなATが特定の生徒に適切かを考え,提案するわけです。しかし,具体的にどのようなATによる支援が学生に提供されるかは,複数の専門家や教師,親,本人からなるIEP Meetingによって生徒個人のニーズが特定された上で,最終的に決定されます。

生徒の障害の状態は3年に一度,心理士の検査などにより評価され,支援の大まかな方針の元となります。IEP Meetingは基本的に一年に一度(ただし必要があれば複数回)行われて,その学年での配慮の内容が決まります。

LDのスクリーニングには,WISC 4などの知能検査以外に,学力のアセスメントとしては,以下が一般的に使用され,学力の極端な遅れからニーズを把握するデータとしているそうです。いずれも,IQテストではなく,学力スクリーニングのテストです。

BRIGANCE
http://www.curriculumassociates.com/products/BriganceOverview.asp

Wilcock-Johnson
http://alpha.fdu.edu/psychology/woodcock_ach_descrip.htm

MAP: Measures of Academic Progress
http://www.nwea.org/products-services/computer-based-adaptive-assessments/map

IEP Meetingは,基本的には,専門家集団(OT,PT,ST,Psychologist),教師(時には校長など管理側も),親,本人によって構成されます。別件ですが,先日SnohomishのとあるIEP Meetingに参加したところ,Transition Specialistという専門家が含まれていました。高校卒業後の進学や就労への移行プランで利用できるリソースを明らかにする専門家です。

AT提供の予算ですが,政府,州,市と3つの財源があてられています。他にも,財団のグラントを学区が得たり,日本で言うところの補正予算的な予算が得られることもありますが,あまり一般的ではありません。

ちなみに,Seattle Public Schoolsでは,4万6千人の児童生徒のうち,12~14%がIEPを受けているとのことでした。さらにその詳細な内訳はこのときはわからないとのことでしたが,AT Teamが関わっているのは「High incidence(発生率の高いもの)」がメインなので,いわゆる広義の学習障害的な読み書きの困難への支援が中心とのことでした。ただし元となる障害の種別はさまざまです。また,シアトル地域は支援を求める障害のある人が集まってくる傾向があるので,他の地域よりはIEPの比率が高い,とのことでした。

ちなみに,現在,IEPは紙の書類からクラウドベースのIEP Onlineに移行中とのことです。地域が個別に情報共有するのではなく,州や政府が大規模なサーバを持ち,IEPのデータを管理することになります。コスト削減とトラブル回避,どこからでもデータにアクセスできるという一般的なクラウドの利点が採用の理由です。移行中の担当者たちにとっては新しく覚えることやこれまでの仕事にフィッティングさせる作業があり,現在は大変なところもあるようです。

教科書のデジタルデータについて

AT Teamの部屋にあったソフトウェアやハードウェアは様々でしたが,教科書のデジタルデータについて言えば,基本的にBookshareでデータ(テキストDAISYデータやテキストデータ)を入手して,一般的な音声読み上げ機能のあるATソフトを使っています。

ただし,小学校低学年ではワークブックや基本的な単語の学習などがメインで,「文章を読んで内容や概念を理解する」というリーディングの課題があまりないので,基本的に3,4年生以降から,教科書のデジタルデータを障害のある生徒たちが使うことになります。最もよく使うのは,やはり中学や高校段階の生徒のことでした。また,課目については,やはり「Reading」や「History」といった読むことが中心となる課目でデジタルデータがよく使われているそうです。数学について書くことを支援するにはマイクロソフトの数式エディタを使っているそうですが,それ以外にいろいろなものを使っているわけではないとのことでした(届いたばかりの数学のソフトが部屋に置かれていたので,そのことを突っ込んで質問しておけば良かったと思っています)。

ソフトウェアはKurtzweilがスタッフの手元のコンピュータに入っているのを見せてもらいましたが、こちらもやはり「it depends」でこれが必ず使われるわけではないようです。Bookshareが使われているので,サイトで無償配布しているReadOutLoudやVector Readerが使われることも多いのではないでしょうか。

Kurtzweil
http://www.kurzweiledu.com/

米国では障害のある児童生徒は,一般の学校に通っているわけですが(基本的に通常クラスへの統合教育),だからといって誰もがATを知っているかというと,そういうわけでもなく,AT Teamに学校からヘルプを求める声がかかるかどうかも「it depends(学校による)」ということでした。90校あれば,状況も様々と言うことでしょう。

ちなみに,AT Teamのミッションの一つとして,学校の先生への研修の提供も行っています。AT自体を教師が使うこなせるかどうかも「it depends」で,年齢などに関係なく,すぐに使えるようになる人もそうでない人もいるし,絶対に使いたがらない人もいるとのことでした。

その後,話題はわざわざ遠くの学校ではなく地域の近所の学校に障害のある子供たちが通えるように配慮する計画が行われていることや,合理的配慮とは何か,実際にAT Teamが使っている機器についてのマニアックな話題,iPhoneなどの携帯電話をどう使っているか,などなど話題は多岐にわたりました。

入れ替わり立ち替わり,3人のスタッフと話ができ,いずれも素敵な人たちで話していて楽しかったです。さて,具体的な学校での授業場面やさらに詳細なBookshareデータの教育現場での活用について見ることができたSnohomishでの学校ツアーについては次回。

ひとつ記憶が混乱しているのは,Alternative formatを作成する専任のスタッフがいる地区はどっちだったかな・・・?

まずは以上。

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