「Some Facts about Persons with Disabilities(2006)」翻訳

障害のある人々に関する事実(国連,2006)

「Some Facts about Persons with Disabilities(2006)」
http://www.un.org/disabilities/convention/facts.shtml
※訳注:上記の近藤による翻訳。国連障害者権利条約の採択に向けてまとめられたファクトシート。急いで訳したので,間違いなどがあればコメントください。

全体

  • 世界人口の10%,6億5千万には障害がある。障害者は世界最大のマイノリティ。
  • 世界保健機構(WHO)によれば,この割合は人口増加,医学の進歩や高齢化によって増加を示している。
  • 平均余命が70歳を超える国々では,人々は平均して8年,または人生の11.5%を,障害とともに過ごす。
  • 国連開発計画(UNDP)によれば,障害者18%は発展途上国に暮らしている。
  • 経済協力開発機構(OECD)事務局によれば,OECD諸国では,障害率は学歴の低い群で有意に高くなる。平均して,教育をあまり受けていない人々では障害者が19%いるが,よく教育を受けている人々では11%。
  • ほとんどのOECD諸国で,男性よりも女性において,障害に関連する事例が多い。
  • 世界銀行によれば,正解で最も貧しい人々の20%には障害があり,また,その自分がいる国の中でも,最も恵まれない状況にあると見られている傾向がある。
  • 障害のある女性は,重複した不利益のある人々であると考えられており,その性別と障害による排除を経験している。
  • 障害のある女性や少女は,特に虐待の対象とされやすい。オリッサ州(インド)で2004年に行われた小規模な調査によれば,障害のある女性や少女は事実上全員が家庭で虐待を受けており,知的障害のある女性の25%はレイプ被害に合っており,障害のある女性の6%に強制不妊処置が行われている。
  • UNICEFによれば,ストリートチルドレンの30%には障害がある。
  • 英国国際開発省によれば,5歳以下の死亡率が20%以下に低下した国々でも,障害児の死亡率は80%と高く,いくつかの事例では,子どもたちが「除去されている」ようにも見えると報告した。
  • 障害関連の法律に関する国際比較研究によれば,障害差別禁止およびその他の障害関連法を持つ国は45カ国のみ。
  • 英国では,ロンドン株式市場FTSE 100 Indexの企業の75%で,ウェブのアクセシビリティが基本的なレベルにも至っておらず,1億4700万ドル以上の収入を失っている。

教育

  • UNESCOによれば,発展途上国に暮らす障害のある子どもの19%が学校に通っていない。
  • 1998年の国連開発計画(UNDP) 調査によれば,全世界の障害者の識字率は3%,女性障害者の識字率は1%の低さに留まっている。
  • OECDによれば,OECD諸国では,高等教育における障害のある学生の数は増加しているが,依然過小評価されたままである。

雇用

  • 国際労働機関(ILO)によれば,就労年齢にある世界人口のうち,推計3億8600万人に障害がある。
  • 幾つかの国では,障害者の失業率は80%に及ぶ。事業主はしばしば,障害者は働くことができないと考えている。
  • 国立インド障害者雇用促進センターによれば,インド人口の5~6%に障害があり,また「インド障害者法」では,政府雇用の3%が障害者の雇用枠として確保されているにもかかわらず,就労ニーズはマッチングされていないままである。インドにおける障害者7千万人のうち,産業界で就労できるのは10万人ほど。
  • 2004年の米国調査では,障害のない人々では就労率は78%だが,就労年齢にある障害者では,35%のみが実際に働いている。回答した失業している障害者のうち3分2は,働きたいが仕事を見つけることができない。
  • 米国ラトガース大学の2003年調査では,身体および精神に障害のある人々は,米国の職場で極端に過小評価され続けている。調査対象となった雇用主の3分の1は,障害者は効果的に成果を上げられない,求められる職務を果たせないと考えている。障害者を雇用しない理由の第2位は,特別な設備にかかるコストに対する恐れであった。
  • 2003年に行われた雇用主に対する米国での調査では,配慮にかかったコストは500ドルかそれ以下であった。雇用主の73%は,労働者は特別な設備を何も求めなかったと報告した。
  • 2002年の米国調査では,企業は障害のある労働者の雇用定着率が高く,離職率のコストを低くしていると報告した。その他の米国調査では,採用1年後の雇用定着率は,障害者では85%であった。
  • 米国労働省によれば,数千人の障害者が,小規模ビジネスの事業主として成功している。1990年国勢調査では,自営業や小規模ビジネスの経験者は,障害者で12.2%に対し,障害のない人々で7.8%であった。

暴力

  • 戦争において一人の子どもが死亡するたびに,3人の子どもが負傷または永続的な障害を受ける。
  • WHOによれば,幾つかの国では,障害の最大で4分の1は,怪我または暴力によって起こる
  • 英国の2004年の研究では,障害者は暴力やレイプの対象となりやすく,一方で警察の介入や法的保護,予防的治療の対象とはなりにくい。
  • 研究によれば,障害のある子どもへの暴力は,障害のない子どもと比較して,1年の発生率が1.7倍大きい。

以上

米国の小中高での電子教科書の利用(3)

「ブックシェアとは?」

さて,前回前々回と,障害のある児童生徒の電子教科書利用について,シアトル公立学区やスノホミッシュ学区ではブックシェアが利用されていることを紹介しました。今回は,このブックシェアについて具体的な説明をしたいと思います。 続きを読む “米国の小中高での電子教科書の利用(3)”

大学での障害学生への合理的配慮(2)国内の支援事例

さて,前回に引き続いて合理的配慮のガイドラインについてですが,前回書いたように,「合理的配慮」の考え方を前提にすれば,本来的に全国共通のガイドラインはありえないということになります。しかしそれでは実践を始めようにも参考にならないので,今回は,日本でどのような配慮が行われているかについて知るためのリソースを示してみます。

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大学での障害学生への合理的配慮(1)

大学での障害学生に対する合理的配慮について何かガイドライン的なものがないか,というコメントを某大学で教員をしている友人より受けました。最近,合理的配慮という言葉が日本でもすこしずつ聞かれるようになってきたものの,日本ではあまり耳にしない言葉であるために,何をすればいいのか,どう考えておけばよいのか,どうもよく分からない,という意見があるように思います。良い機会なので,「大学での合理的配慮」について少しまとめてみます。

就労や高等教育以外の教育場面についてなど,すべての分野での合理的配慮ではなく,高等教育機関での合理的配慮に話題を絞っています。もちろん他の分野と重複する部分もたくさんあるんですが,この前提をおいておかないと話が複雑になりそうなので念のため。

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オバマ政権での自閉症者施策について

ホワイトハウスの施策公開ページである「THE AGENDA http://www.whitehouse.gov/agenda/disabilities/」に,オバマ政権での障害者施策について書かれていましたが,後半の半分ほどが自閉症のある人への施策に触れられていたので訳出してみました。

自閉症対策法をベースにした大規模スクリーニング実施とそれに基づく対策の立案・実施へ向けた動きが本格的に始まるということのようです。

<以下訳>

自閉症について

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スウェーデン企業・「2万人の障害者集団」サムハル

2万人の障害者を雇用するスウェーデンの国策巨大企業「サムハル」の記事が日経ビジネスに掲載されていました(日経ビジネスは閲覧に無料のユーザ登録が必要でした)。

働きたい者には等しく機会を与える
“障害者集団”、スウェーデン・サムハルの驚愕(1)
http://business.nikkeibp.co.jp/article/manage/20090114/182649/

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ATACカンファレンス京都2008お疲れ様でした

今年も12月5〜7日とATACカンファレンスで講師を務めさせていただきました。ご参加いただいた皆さん,ありがとうございました。

ATACカンファレンス京都2008

ATACは講師と参加者の方々の距離が近いので,終わった後にいろいろなご意見いただけたりと講師にとってもとても楽しいイベントです。たくさんのアイデアと元気をいただきました。また来年,京都でお会いできればうれしいです。

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厚生労働省の発達障害情報サービス

厚生労働省のウェブサイトに、以下のような情報ページができました。今後どんどん情報が充実してくるといいですね。

発達障害情報サービス:トップページ
http://www.mhlw.go.jp/ddis/a/index.html

全国の発達障害支援センターの連絡先も、以前はPDFでしか見られなかった(官公庁関係ではPDFでのみ公開、というスタイルが多くて多少不便です)のが、このサイトで公開されています。まだ準備中の部分も多いですが、今後が楽しみなサイトです。

発達障害のある人の働く環境を整えるには?

以下のようなマニュアルをご存じでしょうか。厚生労働省が作成したマニュアルですが、以下のサイトからダウンロードすることができます。

発達障害のある人と、一緒に働きやすい環境を作りたいと考えている方はぜひ一度読んでみてください。また、発達障害のある人自身にとっても、自分の作業を楽にする工夫・アイデアが見つかるかもしれません。

発達障害のある人の雇用促進マニュアル
htpp://www.koyoerc.or.jp/dd.html

第1章 発達障害とはどんな障害ですか?
第2章 雇用管理で配慮すべきポイント
第3章 Q&A こんなことに戸惑いを感じていたら
第4章 さまざまな職場で働く発達障害のある人
第5章 発達障害者に対する就労支援サービス
付 録 支援機関一覧

 発達障害者支援法の成立(平成17年4月1日施行)等を背景として、発達障害者の自立及び社会参加の促進を目的とした企業就労に向けた意識が高まっています。しかしながら、現状においては、障害のわかりにくさや支援体制の不備等から、障害に関する知識や就業に当たっての配慮事項等に関するノウハウが一般の事業主には行き渡っていない状況にあります。
 そこで、厚生労働省の委託を受け、発達障害者の特性を踏まえた雇用管理、職場環境の整備の方法等について調査・検討を行い、雇用、医療、福祉、教育等関係分野の有識者及び当事者等の参集を求め、「発達障害者雇用促進マニュアル作成委員会」を開催し、発達障害者の雇用促進に資する企業向けマニュアル「発達障害のある人の雇用管理マニュアル」を開発いたしました。
 本マニュアルは、企業等における発達障害者の障害特性の理解、支援体制の整備等に役立ち、その雇用管理のために広く活用されるよう、行政機関、支援機関、各関係団体等に配布されております。