College Board「Documentation Guidelines for Other Disabilities」翻訳

※College Board「Documentation Guidelines for Other Disabilities」(2022/05/21閲覧)を翻訳したものです。「accommodation」については、一般の方の理解の混乱を避けるため「合理的配慮」と訳していますが、本来の意味通り「便宜」や「変更・調整」と読み換えていただいても構いません。

(以下、上記URLの翻訳:訳注は私)


「その他の障害」に関する根拠資料作成ガイドライン

このWebサイトに掲載されていない特定の障害は、掲載されている障害の下位分類になります。例えば:

  • ディスレクシアとディスグラフィアは、学習障害に含まれます。
  • 脳性麻痺および糖尿病は、身体的/医学的障害に含まれます。
  • DSM-IVに基づく自閉症の診断は、自閉スペクトラム症に含まれます。

College Boardの試験で合理的配慮を受けるには、障害のある学生は、College Boardの障害学生サービス(SSD)を申請する必要があります。これは、個別教育計画(IEP)、504プラン、または学校や州の試験ですでに合理的配慮を行っている場合でも必要です。

すべての申請は、以下の7つの基準を満たしている必要があります。

基準

  1. 診断が明確に記載されている
    根拠資料には、診断された特定の障害が記載されている必要があります。診断は、適切な専門的資格を有する者が行い、具体的に記述され、「精神疾患の診断・統計マニュアル」(DSM-5または診断時に最新版であったもの)を参照している必要があります。
  2. すべての情報が最新のものである
    障害は時間とともに変化するため、根拠資料は最新のものであるべきです。ほとんどの場合、アセスメントおよび診断テストは、5年以上前のものであってはなりません。ただし、医学、視覚、および聴覚のレポートは、1~2年以上前のものであってはなりません(詳細については、それらの障害に関するガイドラインを参照してください)。
  3. 履歴が提示されている
    診断と機能制限(functional limitation)を裏付けるために、関連する教育歴、発達歴、受療歴を提示してください。生徒が学校で合理的配慮を受けた履歴と、現在受けている合理的配慮に関する情報は、カレッジボードが生徒の障害の特性と重篤度、合理的配慮の必要性を理解するのに役立ちます。教師の観察も役立つことがありますので、「教員アンケート用紙」に記載しても構いません。

ダウンロード:教員アンケート用紙訳注:このPDFの翻訳は文末
教室でのテストにおける生徒のニーズについて、教師の詳細な意見を記録するために使用する用紙です。教師の観察は、生徒の合理的配慮の要望を裏付けるために役に立つことがあります。2021年8月13日現在 PDF 109.9 KB

  1. 診断がテストによって裏付けられている
    治療提供者からのメモでは、通常、便宜供与の必要性を裏付けるには十分ではありません。根拠資料では、総合的な評価が行われたことを示す必要があり、以下を含む必要があります。
  • 診断に使用したアセスメントの手続きと手法の概要
  • アセスメント結果の説明的な要約
  • 検査結果および下位検査の得点(標準得点または評価点)
    頻繁に使用されるアセスメントについては、「一般的に使用される診断テスト訳注:リンク先は原文)」のページを参照してください。
  1. 機能的な制限について説明されている
    生徒の障害が、生徒の学業に関する機能およびCollege Board試験に参加する能力にどのような影響を与えるかを説明してください。生徒の特定の障害によって違いがありますが、機能制限については様々な方法で根拠資料を作成することができます。
  • 標準化されたテストの得点とその説明を含む心理教育的アセスメント。診断と機能制限の両方を裏付けるために、全国的な基準を使用してください。
  • 言語療法または作業療法の評価(該当する場合)。
  • 生徒の発達歴、教育歴、または/および受療歴の概要。
  • 教師による観察など、学校からの説明的な情報(教員アンケート用紙に記載することができます)。
  1. 推奨される合理的配慮には、根拠が示されている
    合理的配慮の要望について、以下の点に焦点を当てた詳細な根拠を示してください。
  • 生徒の診断された障害と合理的配慮の要望の関連性。
  • 機能的なインペアメントや学校での合理的配慮を含む、生徒の現在の学業上の必要性。
  • 現在の症状について、頻度、期間、程度を含めた詳しい説明があるとよい。
    時間延長、休憩時間、読むことと見ることへの合理的配慮、回答の記録方法、四則演算電卓の使用、支援技術に必要となる要件については、「頻繁に要望される合理的配慮に関する根拠資料ガイドライン訳注:リンク先は原文)」を参照してください。
  1. 評価者の専門的な資格が記載されている
    評価と診断の妥当性を担保するために、評価者は、その評価者が開業している州の免許を取得していなければなりません。

Documentation Guidelines for Other Disabilities」の翻訳はここまでです。

以下は、上記ガイドラインの文中でリンクされている「教師アンケート用紙」の翻訳です。


教員アンケート

生徒氏名:

返信先:                

教師氏名:               

科目・クラス:             

先生へ: 上記の生徒は、College Board のテストに合理的配慮を要望しています。教室でのテストにおける当該生徒のニーズに関する先生の詳細なご意見は、私たちが意思決定を行う上で、非常に重要です。

  1. 当該の生徒は、あなたのクラスに参加してからどのくらいになりますか?
  2. 見立て: 授業中、当該の生徒の障害とその影響についての見立てを簡単に説明してください。可能であれば、具体的な例を示してください。授業中に現れる当該の生徒の症状の頻度と程度を教えてください。
  3. 使用している合理的配慮:授業中のテストにおいて、当該の生徒が使用している具体的な合理的配慮はどのようなものですか?また、それらのうち、どの合理的配慮が一貫して使用されているかを示してください。
  4. 時間延長: 当該の生徒に教室での試験で時間延長が与えられている場合、次のそれぞれの形式の問題を解くのに、通常どれくらいの時間延長(例:1.5倍)を使用していますか。(注:許可された時間ではなく、実際に使用した時間を示してください)
  • 多肢選択式の問題
  • その他の形式の問題(記述問題、小論文、計算問題など)(該当する問題タイプごとに使用した追加時間数を記入してください)
  • 当該の生徒は延長した時間を通常どのように使っていますか(例:試験問題を解く、解いた試験問題を見直す、休憩を取るなど)。
  1. 影響: 提供された配慮が学生の成績に与える影響を記述してください。当該の生徒は、その合理的配慮を効果的に使っていますか?テストでの成績はどのように変化しますか?合理的配慮を提供しなかった場合、どうなりますか?

署名:               

日付:               

質問がある場合は、College Boardに連絡してください(訳注:原文には電話番号が掲載されていますが、この翻訳では削除しました。原文に当たってください)




以上、「教師アンケート用紙」の翻訳はここまでです。この原文はhttps://accommodations.collegeboard.org/media/pdf/Teacher-Survey.pdfで一般公開されているもの(2022-05-21閲覧)を、翻訳者(近藤武夫 kondo@bfp.rcast.u-tokyo.ac.jp )が日本語の文章に訳したものです。翻訳文については、原文を公開しているCollege Boardとは全く無関係ですので、上記連絡先へは問い合わせないでください。

最後に、「Documentation Guidelines: Extended Time(時間延長に関する根拠資料ガイドライン)」の一部を引用します。

For Students with Learning Disorders or ADHD

When requesting testing accommodations for students with learning disorders or ADHD, the most helpful information is a comprehensive cognitive and achievement battery that includes scores from both timed and extended time or untimed tests. Note: In itself, a low processing speed does not usually indicate the need for testing accommodations. In this instance, documentation should show how the low processing speed affects the student’s overall academic abilities under timed conditions.

学習障害またはADHDのある生徒の場合

学習障害やADHDの生徒のためにテスト・アコモデーション(試験の合理的配慮)を要望する場合、最も役立つ情報となるのは、時間制限のあるテストと時間延長されたテストの両方のスコア、または時間制限のないテストのスコアを含む、総合的な認知および学習成績バッテリーです。注:処理速度が低いこと自体は、通常、テスト・アコモデーションの必要性を示すものではありません。この場合、処理速度の低さが、時間制限のある条件下で、生徒の全体的な学力にどのような影響を及ぼすかを示す根拠資料が必要です。

以上です。

高等教育と障害:全国協議会設立準備大会のお知らせ

ブログの方,大変ご無沙汰してしまっています。イベント紹介の時にたまーに書くようではいかんなと思いつつも,イベントの紹介です!

三年後の障害者差別解消法施行の準備という目的もあり,以下のような全国協議会の発足に向けた会が開かれることになりました。一般公開されますので,このテーマにご関心おありの方々のご来場を心よりお待ちしております。

以下,転送自由です。

ーー<ここから>ーー

「高等教育における障害学生支援に関する全国協議会(仮称)」
設立準備大会のお知らせ

概要:
高等教育での障害学生支援が全国的に広がりつつあります。大学の国際化
と多様化を考える上で,障害学生に対する合理的配慮やその他の支援は,
大学にとって重要なテーマの一つとなっています。

加えて,今年6月の障害者差別解消法の成立により,3年後の4月から,
障害学生への合理的配慮を行うことが国公立大学では義務化,私立大学で
は努力義務化されます。本大会は,全国の障害学生支援の取り組みを行っ
ている大学による協議会の設立を目指すものです(協議会の発起人となる
大学名を当日公開いたします。全国の国公私立大学から40校程度の参加
となる予定です)。

会の後半では,全米の大学が加入する協議会AHEADから,会長である
Scott Lissner氏を招き,米国での障害学生に対する支援の実際について
お話を伺います。米国では,障害者差別禁止法により差別の禁止と合理的
配慮の提供が義務化されています。AHEADは,高等教育における障害
学生への合理的配慮の担当者が多数参加する協議会です。

本大会は,障害のある人々の大学進学や,高等教育での障害学生支援に
関心をお持ちの方々を対象に,広く一般公開いたします。多くの方々に
ご来場いただけましたら幸いです。

続きを読む “高等教育と障害:全国協議会設立準備大会のお知らせ”

DO-IT Japan2012 障害のある児童生徒・学生の進学を考える公開シンポジウム

今年もDO-IT Japan夏季プログラム期間最終日の8月4日,公開シンポジウムを開くことになりました。今年も障害学生の進学とキャリア育成に関する議論が中心となりますが,いくつか進展があります。

今年は文科省の高等教育局でも,ついに「障害」と名がつく委員会が作られました。これまでは,初等中等教育局にしか,障害や特別支援教育と名がつく部署はなかったのです。権利条約の批准と合理的配慮の提供のあり方を議論する必要性の高まりが背景にあります。日本もついにと思うと,本当に感慨ひとしおです。私も委員として参加させていただいていて,他の委員の皆さんの知識やご経験はもちろん,やる気や熱意の高さも素晴らしいと感じます。

高等教育から就労へ向けて,さらにメインストリーミングされた移行支援が必要になってくるでしょう。今年のテーマには,大学や入試での支援の現状に加えて,「試験の本質を考える」というテーマもあります。合理的配慮を考える上で,何が「合理的」なのかを決めるためには,その試験が問おうとしている本質は何なのかを避けては通れないためです。これらの議論を通じて,障害のある人もない人も「共に学び,働き,暮らす」社会について考えられたらと思います。


DO-IT Japan 2012 夏季プログラム特別企画
一般公開シンポジウムのお知らせ(転載自由)

<開催情報>

日時:2012年8月4日(土)13:30~17:00
場所:東京都目黒区駒場4丁目6番1号
東京大学先端科学技術研究センター
3号館南棟大ホール(一般公開シンポジウム)
4号館2階講堂(交流会)
地図:http://www.rcast.u-tokyo.ac.jp/ja/maps/index.html
参加予約:必要(後述の「お問い合わせ・参加申し込み」をご参照ください)
参加費:無料(交流会参加者のみ軽食費千円を当日懇親会会場にて申し受けます)
※当日の会場には要約筆記による情報保障あり,車いすでの会場への入場可能
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大学の障害学生支援室は書籍を電子的に複製する権利があるか?

 表題の件について,ある大学の障害学生支援室関係者より質問を受けたので,「大学の障害学生支援室の行う支援と著作権」のみについてここにまとめておきます(初等中等教育の教科書に限っては,教科書バリアフリー法があるのでまた別の議論となります)。 続きを読む “大学の障害学生支援室は書籍を電子的に複製する権利があるか?”

【研究協力校募集】「魔法のふでばこ」プロジェクト

東大先端研とソフトバンクの共同研究の件で,研究協力していただける特別支援学校を募集しています。ご関心お持ちの方は,ぜひ下記の「魔法のふでばこ」プロジェクトのウェブページをご覧の上,事務局(e-AT利用促進協会)までご連絡ください。締め切りは1月末です。

障がい児向け情報端末活用事例研究「魔法のふでばこ」プロジェクト

★ 研究協力校を募集し、iPadを無償で貸し出します。 続きを読む “【研究協力校募集】「魔法のふでばこ」プロジェクト”

文部科学省障害学生受入促進研究委託事業・高大連携シンポジウム

以下の様なシンポジウムが開かれます。我々のグループ(東大先端研)からも,主に障害学生の受験とその配慮に絞った話題提供を予定しています。1月21日締め切りの参加申し込みが必要です。詳細は以下のURLをご覧ください。

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文部科学省障害学生受入促進研究委託事業 高大連携シンポジウム 開催ご案内
http://www.jasso.go.jp/tokubetsu_shien/koudairenkei.html#shinpo
続きを読む “文部科学省障害学生受入促進研究委託事業・高大連携シンポジウム”

ハワイ大学マノア校訪問&今年も宜しくお願いします

あけましておめでとうございます。今年もどうぞ宜しくお願いします。

さて,新春は3日から,ホノルルで開かれた Hawaii International Conference on Educationに参加して,日米の高等教育に関する政府統計情報から読み取れる障害学生支援の状況について発表してきました。フィリピンやカリブの人たちなど,多様な国からの発表者が来ていて,そうした国の人々とのつながりができる良い機会となりました。 続きを読む “ハワイ大学マノア校訪問&今年も宜しくお願いします”

今年役立ったツール2010

 さて,この一年の記事を振り返ってみると,今年は便利なツール紹介をブログでほとんどやっていないことに気づきました。そこで,この一年を過ごす中で,私自身の日々の仕事のために役立ったツールをまとめておきたいと思います。どなたかの参考になることがあれば嬉しいです。私自身,ひとつのことに注目しているとほかのことが目に入りにくくなるなど,動機付けをやるべきことに振り向けることが苦手だったり,見過ごしや見落としが多くなりがちな特性があると感じています。しかし,こうしたツールを活用することで,そうした特性があまり問題にならなかったり,良い方向に向けて強みとすることができると思っています。年末らしく順位を付けてみます。主観的に助けられた順です。まずは10位から。 続きを読む “今年役立ったツール2010”

米国の小中高での電子教科書の利用(3)

「ブックシェアとは?」

さて,前回前々回と,障害のある児童生徒の電子教科書利用について,シアトル公立学区やスノホミッシュ学区ではブックシェアが利用されていることを紹介しました。今回は,このブックシェアについて具体的な説明をしたいと思います。 続きを読む “米国の小中高での電子教科書の利用(3)”